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 やっと鑑賞。
 前作は1982年公開なので続編と言うにはあまりにも時間が経過しすぎている本作、前作のBlu-rayで復習予習してから鑑賞しようとしていたがその余力なく、ぶっつけでの鑑賞となった。

 感想は、もう少し尺が短ければ。それ以外も満足とは言えないが全てがマイナス評価でもない。しかし、まったくの新規ファン獲得は、やはりちょっと難しいかもな、といったところである。

 やはり映画というのは、観る側の集中力の限界というのもあり2時間±せいぜい15分くらいが適当であって、それを大きく超える長さにするときはよほど観客を魅了し続ける確信がないとやってはいけないものだと、改めて感じた。

 制作陣は「思ったより客層が拡がらなかった」と漏らしているらしいが、だってアナタ、前作を観ないと分からない設定を前提としている以上、前作を直前に全米無料再上映くらいしないと客層は拡がらないでしょ。
 じっさい北米の興行成績でも、観客は年配男性が多かったそうなので、まあそういう映画でしょうな。

 見た目や行動様式の類似性のみならず、傷つけば血も流す疑似人間(レプリカント)と、本物の人間の違いは何なんだ、っていうSFでは古典的な題材のひとつとも言えるテーマを、前作の雰囲気や地続き感を損なわずに上手いこと料理したという点では良作と思うのだが、いかんせん、しつこいようだが2時間44分は長すぎる。
 主要登場人物の半分はレプリカントであること、舞台が「地球外に住む富裕層から半ば見放された地上世界」であることなどから、俳優陣は淡々とした、乾いた演技になりがち。また前作同様、ハリウッドアクション的な派手な演出はごく少なめ。ストーリーは良く出来ているもののシンプルで、二転三転したり敵味方が入り乱れたりという目まぐるしさもなし。
 NHKドキュメンタリー番組を観ているかのような、何とも贅沢な時間の流れを全編通じて感じるのである。

 アーティスト的には撮りたかった画ばかりなんだろうけど、どうせなら前作にならって、上映映画としてはカットできるところはカットして、別途Blu-rayなどで「完全版」を売るとかさ。どちらにせよ円盤まで買うのはマニアなので、ブックレットとか設定資料とかつけてがっつり制作費の一部を回収できる価格設定すれば良かったのにと思う。

 俳優陣の演技はというと、率直に言って可もなく不可もなくだったのだが、強いてあげるなら、Luv役のシルヴィア・フークスが「造られたモノっぽさ」をほどよく表現していて良かったのと、Joi役のアナ・デ・アルマスのこれまた造られたベタベタな男好きする感じが良かったなと。
 それにしてもハリソン・フォードの要介護っぷりは、スター・ウォーズEp.7での扱いに続き、彼を鏡に自分自身の加齢をも痛感し、寂しい。世代的には仕方がないのだが。

 日本人ファンとしては、前作で半ば伝説化した意味不明台詞「ふたつで十分ですよ」をパロった演出がほしかった一方で、今作の日本語シーン(データ検索するときのボイスメッセージ)が関西訛りっぽくて面白かった。

 本作は、突拍子もない行動とか、ウィットでユーモアに富んだ会話とか、進行上はどうでも良いが画の中で気づくと面白みを感じる小物とか、そうした要素は割と少ない。現状の「断捨離」具合もハードSF映画っぽさがあって嫌いではないが、多めに分かりやすく配置されていたほうが受けは良かっただろうなと思う。
 これはドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の作風なのかも知れないが、画も演出も無機質的かつ無音的である。特にシーンをつなぐ「間」の取り方が独特で、キーワードとしては「アンビエント」とか「禅」や「ワビサビ」という言葉さえ浮かぶ。
 監督は「断捨離を極めたミニマリストで、テーブルと椅子しかない部屋で環境音楽を聴きながら瞑想にふける」ような人なのではないかとさえ感じる(あくまで自分の勝手な想像である)。そう思い込むと、凡人とは違う時間軸であっても不思議ではないかもな。

 終わり方については、虚脱感があって、自分としては好きだ。大団円的なのが好きな人には?マークがたくさんつくでしょうな。

 つまるところ、まとめると「前作ファン向け」であり「ヴィルヌーヴ監督の常連さん優遇」で「映像美」と「間」を楽しむ映画である。
 ある意味、最低限ポイントは抑えていると言えるのかも知れないが。

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arrival いま旬のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作。鑑賞した過去作「ボーダーライン」とは打って変わって、サイエンスフィクション。「ボーダーライン」のときも書いたが、この監督はSF映画の名作「ブレードランナー」の続編「ブレードランナー2049」を撮ることになっており、その出来映えが気になる自分としては、本作を通じて期待値を推し量ろうというつもりで鑑賞したが、期待は大きくは膨らまなかったものの裏切らないであろうといった感想の、良作であった。

 ドンパチや派手なアクションのないSF映画ということで観る人を選ぶ作品ではある。
 なぜか「インターステラー」を思い出した。舞台設定、画作り、場面進行など全く違うのだが。時間というものの捉え方がテーマのひとつになっているところが、そう思わせたのかも知れない。

 アートワークと音楽がけっこう良くて、特にUFOの質感とか、例の文字とか、禅の影響を見いだせるような東洋的センスを感じて、これはブレードランナーでの画作りでも期待できるなと思わせた。

 この映画は「あなたの人生の物語」という、ネビュラ賞までとった原作(じっさいは左記の本は短編集で、原作はそのなかのひとつ)があるのだが、自分は未読である。ネット上にある感想を読むと、泣けるとのこと。本作は原作とはかなり違っているとの意見も多々ありつつ、ラストはうるっとくるものがある。

 エイミー・アダムス演じる主人公が最後のほうは英語で話しかけてたとか、いくら言語が思考を決定づけるとしても異星人の言葉を理解しただけであのような能力が身につくのか、とか、細かいことを気にすると色々あるのだが、それを補って余りある、ラストシーンで抱擁するときのなんとも言えない表情は感情移入させるものがあり、それまで張りまくった伏線も全てここに収束する。演技も撮り方も、上手いね。

 この監督、ネットで読んだインタビューで、好きな(SF)映画に「未知との遭遇」「2001年宇宙の旅」そして「ブレードランナー」をあげている。

 なるほど、この映画を撮りたかったわけだし、上手く撮れるわけだよ。

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 通常スクリーン(字幕)とIMAX 3D(字幕)で鑑賞。ナンバリングではなく外伝だが、一部ではスターウォーズ史上最高傑作という声もある今作。観た感想としては「そうかも」。そしてほぼ確実にエピソード4~6をまた観たくなる、特にエピソード4は今作によって面白さが増したどころか、物語の深みまで増してしまった。

 いつものルーカスフィルムロゴから「Long time ago…(遠い昔遥か彼方の銀河系で)」で映画は始まるのだが、そのあとすぐに流れるタイトル&オープニングテーマとテロップが流れるところはなし。暫く導入部の物語が進んだ後、主人公ジン・アーソの育ての親となる、ソウ・ゲレラの印象的な台詞に続いてタイトル&オープニングテーマ。外伝だから意図的にパターンを変えたんだろうね。スターウォーズらしくないのだが、自分的にはこの始まり方は好きだな。それにしても今作は、音楽がとても良い。

登場キャラ・・・ほぼ全員かなりキャラが立っていて、いいね。個人的には孤高の反乱軍戦士ソウ・ゲレラと帝国軍脱走パイロットのボーディー・ルックを掘り下げるエピソードがもう少しだけほしかったところだが。

登場メカ・・・文句なし。エピソード4~6のあの直線的フォルム&モノトーンなメカ達が大好きで、1~3のカラフルな感じにちょっと違和感があっただけに、7が公開されたときに4~6の流れを汲むメカを観て少し溜飲を下げることができて良かったのだが、今回は4の直前の物語ということで、4~6で出てきたメカがこれでもかという位そろい踏みで、特にAT-AT大好きっ子としては、戦闘の最中に、盲目のチアルートが振動音で何らか驚異を感じて色めき立ち、その後にドーンと足が出てくる登場シーンはちょっと鳥肌ものであった。

ストーリー・・・素晴らしい4へのつなぎ。4でなぜデス・スターがあんなチンケな弱点を抱えていたのかというご都合主義までちゃんと説明つくようにしているところが素晴らしい。
 今作は4の直前の時代なだけに、ジェダイはひとりも出てこない。故にライトセーバーでのチャンバラはなし。と思わせといて、最後の数分間でダース・ベイダーのライトセーバーが炸裂。暗闇に光る赤いライトセーバー、これは圧巻というほかない描写。
 そして本当に4が続けて上映されるんじゃないかというくらいの流れで、エンディング。
 キャリー・フィッシャーさん急逝を悔やみつつ、エンディング直前に出てくるレイア姫、良くここまで再現できたな。

 全編においてスターウォーズへのリスペクトに満ちていて、キャラも画も音楽もきっちり作られていて、お約束の破り方も絶妙。そして何より、1977年に公開された初代作品の質まで高めてしまうという離れ業をやってのける。冒頭で書いたとおり、確かに最高傑作かも知れないな。
 これ、ディズニーが味を占めて外伝乱発にならなきゃいいけどという余計な心配まで頭をよぎるね。

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(原作漫画Kindle版)

 スーパーメガヒット中の「君の名は。」は未鑑賞だが、こちらもだいぶ話題になっているので、今更ながら。
 後半、すすり泣く観客の方があちこちに。自分はそこまではいかずとも、心に刺さる良い映画であった。

 まず映像と音。絵を描くのが好きな主人公なのだが、その主人公が見た景色を絵本や絵画のように実際の情景に混ぜ合わせるアニメならではの映像表現が素晴らしい。そして音も、静から動の切り替えの妙か、そもそも音自体が良いのか、臨場感がすごい。空襲のシーンは正直なところほんとにビビる。

 つぎに演出。これがこの映画のキモだと思うのだが、なんて言うか、湿度と温度がまさに「普通」なのである。「ほらここが泣き所ですよ」的な演出はなく、登場人物も個性豊かではあるものの、不自然に熱かったり冷たかったりはしない。また戦争を描く映画だと、人々の戦う場面はもとより悲鳴とか怒号とか憤怒の応酬みたいなものが少なからず描かれることが多いわけだが、この映画はいわゆるそういう分かりやすい演出は極めて少ない。だからかえって感情移入しちゃう。

 あとこの映画の話題のひとつである声優「のん」さん、ネット上の皆さんの評価通り、まさにハマり役だね。この声優があってこそ、この映画がここまで仕上がったと言える。

 エンドロールを観ながら、ふと思ったことは、これは現代の「まんが日本昔話」なのかも知れないなと。日常の泣き笑いと、この映画の場合は戦争という非日常を、淡々と描きつつ、変なイデオロギーや教条を押しつけるわけでもなく話はいったん終わるんだけど、心にはずっと引っかかって、じわじわと深まる感じ。自分の行動や判断の基準のひとつに、じんわりと組み込まれていく感じ。
 画風とか絵の動かし方もちょっと似てるしね。

 小学生くらいのお子さんがいたら、たとえ本人がすべてを理解できなくても一緒に観たら良いと思う。少なくとも、学校の教科書が教える戦争よりは、ずっと深く刺さるだろう。

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 近年、じわじわと評価を上げてきているドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作。
 この監督、SF映画の古典的名作のひとつである「ブレードランナー」の続編を撮ることになっており、これまた今後が楽しみな監督さんである。

 本作は、アメリカ・メキシコ国境付近でうごめく麻薬組織の殲滅を狙って、警察や軍関係の色々な組織が合同で行う秘密軍事作戦を描いたもの。メキシコの麻薬組織と言えば、敵対する人々を見境なく、かつ残虐な方法で殺害するという、中南米でいま最も深刻化している大問題な連中である。映画においても、その残虐性の描写は容赦なく行われる。よってその手の映像が苦手な人は敬遠したほうが良かろう。

 もうだいぶ昔になるが、スティーブン・ソダーバーグ監督によって描かれた、本作と同じようにアメリカ・メキシコにまたがる麻薬問題を取り上げた映画「トラフィック」がある。トラフィックは3つの場所で3つの物語が同時進行する構成になっていたのだが、本作はその3つのうちメキシコ編を彷彿させるような感じである(地理的に同じような場所を描くので似るのも当然と言えば当然だが)。

 特に、全体的にざらざらした砂漠の雰囲気を醸し出す、黄色っぽい映像加工や、言葉の少ない緊迫したシーンが多いところなどは、トラフィックで感じた重苦しい緊迫感を思い出す。

 主役のひとりであるエミリー・ブラントの役柄は、誘拐事件を扱うFBI捜査官ケイトである。映画冒頭でケイトが扱う誘拐事件の黒幕がメキシコ麻薬カルテルだったこと、現場の経験が豊富であることなどから、秘密軍事作戦のメンバーに抜擢?される。

 メンバーのなかには、ジョシュ・ブローリン演じる国防総省の顧問マットや、ベニチオ・デル・トロ演じる謎のコロンビア人アレハンドロなどがいて、それぞれがそれぞれの思惑を持ちながら、謎めいた作戦を実行するために、半ば無法地帯と化したメキシコの都市フアレスに赴く。

 作戦が進むにつれて、様々な危険がケイトの周辺に降りかかるが、ケイトがメンバーに抜擢された理由、マットやアレハンドロの正体や本当の目的が徐々に明らかになっていく。

 さてこの映画、主役のひとりは書いたとおりケイトなのだが、どちらかというと彼女の立場は狂言回しである。常識的な正義感を持ち、女性が故に華奢な容姿のケイトは、作戦で行われる無法行為に憤るも、救いようのない暴力の連鎖に対して、右往左往し、正義と悪の混沌とした境界線上を葛藤する。このあたりが邦題を「ボーダーライン」とした理由なのだろう。

(原題のままでも良かったとは思うし、邦題に対する批判的な意見もあるようだが、この邦題もまあ味はあると思う)

 もう一人の主役であるアレハンドロ、こちらが実質の主役なのかな。まあ渋い演技とアクションの見せ場多数で、まさにこの俳優にしか出来ない役柄だろうね。どこか哀愁の漂う、乾いた緊迫感を醸し出すのが抜群に上手い。映像に行われている黄色がかった加工がこれほど似合う俳優も他に思いつかない。実際、トラフィックのメキシコ編にも刑事役で出演している。

 その他のキャストは割と無難な感じで、役柄もステレオタイプだったので省略するが、印象的だったのは、メキシコ側にいる警察官とその家族の描写。最後のシーンなんかは、前述したトラフィックのメキシコ編の最後の感じと似ていて、後にかなり重たく悲しい余韻が残る。この監督、ぜったいトラフィックをリスペクトしてるよね。

 あと他は、移動中のメキシコの自然や、夕刻に遠くからみるフアレスの街並みなど、魅入ってしまう印象的な映像が多数ある。美しいのだが、同時に絶望感があるという感じ。音楽も緊迫感があってよろしい。

 という風に、とにかく映画全編に渡って、暴力と緊迫と葛藤のオンパレードなので、ストーリー的には、文中で何かにつけ引き合いに出したトラフィックと比べても単純でダレやすい内容だとは思うのだが、冒頭の緊迫感を保ったまま一気に観ることができる。

 まあしかし映画の核心でありネタバレなので書かないが、時代は繰り返すというのと、アメリカってほんとに毒をもって毒を制すっていう、暴力の連鎖に自らハマっていく国なんだなあと。