ネット上や同業者の界隈で、古くから長きに渡って議論されている、日本のSIビジネスにおける問題点の1つ。
 ここ数日、わりと濃厚な議論がネット上で交わされていた。
 自分も類似の問題意識を持っているので、自分用メモとして、一連の記事を追っかけてみた。

 というわけで早速。

親子丼的ビジネス奮闘記(4)IT業界構造(2007年09月19日 09:45 mark-wada blog

 たぶんこれが元記事。日米比較対比的な視点からIT業界構造の問題点に言及している。解決策の1つとして BPM on SOA を提案。

 see also:「ビジネスから考えてこそSOAの意味がある」、IBMと豆蔵の両エバンジェリストが強調(2007年9月14日 ITPro)

 [コメント]
 恥ずかしながらSOAというものを、最近になってやっと「聞き流しではなく、しっかり見聞」するようになりました。
 確かにマクロな流れとしては、SOAというのは、あるべき方向なんでしょうね。
 ただ個人的な印象として、わりと今までキーワードバブルになっていた感もあるので、ユーザ企業に「またSI屋に騙された!」みたいな感覚をいかに抱かせないか、がポイントである気がする。
 SOA化自体が目的にならないように、手段としてのメリットデメリットや、今までの手法との違い、をちゃんとユーザに分かる言葉で説明する必要があると思いました。

>[会社組織][SIer]アメリカにはSIerなんて存在しない(2007年9月20日 01:37 GoTheDistance

 一連の議論の、実質的なルート記事がこちら。
 アメリカにSIerが存在しないという話から、なぜSIerなんてものができたのか、SIerというのは、いわば奇形児のような存在ではないか、という話。

 see also:第81回 コストDownと売上Up-情報システムにおける負の因果律株式会社クラステクノロジー 代表取締役 四倉幹夫氏コラム)
 see also:そんなに甘くない(2007年8月31日 22:22 秋の気配のはぶにっき

 [コメント]
 ご本人ブクマ数に驚いておられるようですが、きっとタイトルの妙があったんでしょうね。断定的なタイトルとは裏腹に内容は示唆的かつ発散的で、いろいろと考えさせられる内容なのですが、そのタイトルとのギャップが尚更、他者をインスパイアさせたのでしょうきっと。ブクマを呼ぶ、ひとつのパターンなのかな。

>>平和な日本の平和じゃないSI業界の話(2007年9月20日 寝ても覚めても技術屋

 そもそもSIerがない米国で生まれ育った考え方をそのまま日本に持ち込んでも、うまくいかない。日本に合ったモデルを考えるか、業界構造自体を変えるか、しかないよ、という話。さらに後半はΣの話など。

 see also:海外と日本は違う.違うなら違うでやるべきことがあるハズ(2007年9月9日 寝ても覚めても技術屋
 see also:デスマーチ撲滅への「飛躍」なるか–大手SI事業者、外部設計書の記述を標準化(2007年09月19日 21:06 ZDNet Japan)
 see also:プロジェクト×(ペケ) -失敗者たち-「Σ(シグマ)計画」(2001年2月26日)

 [コメント]
 Σの話は私も先輩から聞かされました。もしかすると、現代における構造的問題は、過去のΣみたいに「分かりやすい失敗事例」というか「みんなが叩きやすい、議論の叩き台としての大々的な砲撃目標」がない分、責任も問題もぼやけがちで、たちが悪いのかも知れません。

>>日本のSIerが育んできたもの(2007年9月21日 0:58 眠る開発屋blog

 SIerがマーケティングまで完遂させ成功したソリューションが思いつかないなあ、という話。それに絡んで、優秀さってなんだろう?という問題提起。

 see also:優秀さの定義を言い換えてみる(2007年8月5日)
 see also:優秀さの定義。(2007年8月4日 もち肌ビジネスマン奮闘記

 [コメント]
 SIerって根本的に受身でやってきたから、世の中に向かって提案する、なんてことは急にやろうとしてもできないのでしょうね。解決策としては、世の中へ直接提案してビジネスを発掘している会社に、社員を送り込んで勉強させるとか、どうでしょうかね。意識改革するには、意識改革しなければ話が通じない世界に飛び込むのが唯一の方法のように思えます。
 なお、記事中で紹介されている「優秀さの定義」という記事は、秀逸です。(厳密には、そのさらに元記事が秀逸なのであるが)

>>[雑記]脊髄反射で書く小ネタの数々(2007年9月21日 キングフラダンスの恍惚と快楽。

 米国ではSIerの代わりに会計系コンサルティングファームがシステム構築を請け負ってたよ、という話。

>>[SIer]SIerという奇形児と、SIという珠玉の仕事(2007年9月21日 GoTheDistance

 前出の「[会社組織][SIer]アメリカにはSIerなんて存在しない」の補足というか続き。システム開発におけるディフェンシブ/オフェンシブの話。SIerの生きる道。

 see also:[SIer]ディフェンシブな開発 ~ SIビジネスの致命的欠陥 2006年1月16日 kuranukiの日記
 see also:[仕事]SIって最高の仕事ですよ 2007年6月20日 秋の気配のはぶにっき
 see also:情報サービス産業に明日がなくても構わない 2007年5月13日 雑種路線でいこう

 [コメント]
 ディフェンシブ/オフェンシブの境界は、システム規模や開発体制(下請け段数の少なさ)にもよると思いますが、同時に世代間論争である気もします。要するに、新たなビジネス環境、新たな開発手法、にたいして、物事の決定権を持つ「エライ人(≒大体おじさん)」がどれだけ理解を示すか、みたいな。
 また、SIは最高の仕事だ、というのは同意ですが、それはつまり、やりようによっては「最高に難しい」仕事であるということで、最高に難しい仕事なのに、最高に頑張った人の対価が最高でないところが、結局は歪みの一因なのでしょう。誰だ、ピンハネしているやつは。

>>親子丼的ビジネス奮闘記(6)(2007年09月22日 11:06 mark-wada blog

 「[会社組織][SIer]アメリカにはSIerなんて存在しない」へ返信しつつ、自らの記事「親子丼的ビジネス奮闘記(4)IT業界構造」を補足。さらに、ITゼネコンピラミッドを解体してある領域に強みを発揮する専門会社群を形成し、それをネットワーク化して、適宜組合せを変えながらビジネスを展開することを提唱。

 [コメント]
 同感です。私がある程度の規模のシステム開発会社を経営できたとしたら、強みに特化したいくつかの会社へ分化させていって、連合体を作ることを模索すると思います。
 それ以前に、最近、私はそのような会社の経営者を目指す道からドロップアウトしてしまいましたが。

>>>[医療IT]ITベンダーSEとしての「電子カルテ」のあり方 2 ~「SIerという奇形児と、SIという珠玉の仕事」に関して(2007年9月22日 アイム ア ビジネスマン

 医療ITに関して、ディフェンシブな開発に向かってしまう要素を考察。そして医療ITベンダーの取るべき道を模索。

 [コメント]
 私の経験上、1つ1つの案件が小さく、かつユーザの運用ルールに合わせざるを得ない風潮で、N件のSIをこなしても儲からないという問題は、医療の世界のみならず、共通した問題だと思われます。

>>>SIerも変革を迫られている(2007年9月22日 流されず逆らわず

 SIerの今のビジネスモデルは破綻寸前で、このままでは縮小均衡にしかならないという問題提起。

 [コメント]
 ちなみに、一度崩壊したら?というのが私の暴論。

>>>どっこいSIerは簡単になくならない(2007年9月22日 雑種路線でいこう

 既出の議論を背景に、SIerが沢山の問題点を抱えていることは認めるが、少なくとも解雇規制がなくならない限りはSIerはなくならない。また、SIerがいる/いらない、システム開発の丸投げがいい/わるい、といった単純な二元論ではないよ、という話。

 [コメント]
 非常に包括的であり、この問題をマクロ視点で見た場合、もっとも「腑に落ちる」内容です。
 雇用に対する考え方、システムの違いが、この問題の根底にあるポイントの1つだと思ってます。
 よく語られる「モジュール型」と「調整型」の違いみたいなもので、ソフトウェア開発というのは「モジュール型」の仕事の典型なのに、人材や人材を取り巻く仕組みはモジュール型になっていない。
 SIerという、小回りの効かない大型トラックに閉じ込められている「できる技術者」達がトラックから降りて、その人の専門性や能力がもっとも活かせる車に柔軟に乗り換えられる状況を作りだすこと、そうした営みをサポートする「職業別組合」みたいなものを構築していったらいいんじゃないか、なんて論拠のない妄想を抱いています。
 そして、相思相愛ならまた大型トラックに集まるもよし。結果は同じでも、当事者同士が選択したかどうか、選択できるかどうかが重要。

>>>>[システム開発]キンタマをつかむ(2007年9月22日 masayangの日記(ピスト通勤他

 SIerとユーザ企業は、いままで、半ば意図的に互いの重要部分(=キンタマ)をつかみ、つかまれ、もたれあってきたので、その構造はそう簡単には変えられんよ、という話。
 本気でインハウス開発を目指すなら、SI屋に任せているシステムを買い取る、くらいの決断が必要なのでは?という問題提起。

 [コメント]
 この構造をつくり出した大元は、国とNTTと電電ファミリーと呼ばれたNFHであり、そしてそれを増幅させたのは、独自の「公共システムブラックボックス化」を編みだしたNTTD、だと思うのが私の歴史観。
 長い間ソフトウェアはハードウェアの付属物でしかないという認識が、ソフトウェアに対する理解不足を生み、市場の進化を遅らせてしまったのではないか。最終的にはそうした経緯を経てきた古い世代が表舞台からいなくなるころに、変わるかもな、と。その時まで日本市場の主導権が日本企業に残っていれば、の話だけど。

>>>>それなりの人がいればいいのかな(2007年9月23日 1:23 眠る開発屋blog

 「それなりにイマドキのトレンドを理解して、それなりにコードも書ける人」がユーザ企業にいれば十分という状態になっていくのではないだろうか」

 [コメント]
 個人レベルの視点で見た場合、同感できて、そうしていきたいと思う内容です。
 ユーザ企業はITのこと(とくにPMとか要求定義とか)を勉強しなさすぎだし、SIerを頂点とするシステム屋は、同じくユーザ企業の仕事を勉強せず、自分たちの手の内を隠して自分たちの殻に引きこもりすぎ。
 そして、どっちが歩み寄るか、それはシステム屋である程度マネジメントレベルまで学んだ技術者が歩み寄るほうが、自分には自然に見える。

◆◆◆

2007年9月28日 追記。「カレーなる辛口Javaな転職日記」さんリンクありがとうございます。

>>>>>[SIer][システム開発]技術的老化というSIerの持病(2007年9月25日 GoTheDistance

 各エントリへの返信。「ダメエンジニアをかき集めて仕事を進めるスキーム」をどう変えるのかという議論を見据えつつ、SIerの人材マネジメントをどう考えるのか?を議論したい。特定領域に強みを発揮する専門会社群っていうのは総合病院のようなものが出来るイメージだなって話。
 そして後半は本議論とは少し別の話だが、この業界が抱えるもうひとつの構造的問題「人月とExcelとスーツで出来たオヤジ」との世代間闘争の話。(というか階級間闘争か?)

 [コメント]
 良い意味で白熱してまいりました。良い技術者と悪い技術者を統一的且つ網羅的に判断できるクライテリアは確かに必要だと思います。でも仰るようにこの業界の親父さん達はITSS!コールをしだすんだろうなっていう予想は同感。
 私的には、もう少し地に足ついた属性情報・・・つまり言語ごとの習得レベルとか、設計技法(DOAやOOAなどの考え方、UMLなどの表記技法や、テストの技法、etc…)とか、EclipseやTracなどのツール操作スキルとか、それぞれで知識レベルや経験レベルを整理できると、いい感じな気がするんですよね。そういう意味では、最近ではRubyなんかも技術者認定制度を始めるみたいだし。まあ資格オタクみたいな人もいて、やたら資格もってるけど実戦は・・・みたいなこともありましたが。

>>>>>>なんか誤解されてるな(2007年9月26日 雑種路線でいこう

 「[SIer][システム開発]技術的老化というSIerの持病」への返信。

ポイントは駄目なエンジニアを切れないことが問題なのではなくて、ユーザー企業が必要とする技術は変わるのに、そこで機動的に技術者を入れ替えられないことが問題なんだけどな。
なんか誤解されてるな(2007年9月26日 雑種路線でいこう

 [コメント]
 ITSSは、自分が前にいた会社の場合「いままでの、つぎはぎを重ね老朽化した制度に変わる救世主として」採用を検討したために、頓挫しました。だからといって、あるべき論から入れば導入できるのかっていうとそうでもないような気がします。結局、資格を軸にした制度ってのが分かりやすいのかなあって気がしました晩年は。その際に資格オタクの問題と陳腐化の問題が出てきますが、前者はキャリア制度と組み合わせて、あまり関係ない資格を取得しまくらないような足枷を設けたり、後者の陳腐化っていうところは、必要性が薄まっていきそうな技術に関しては、重み比率をわざと経年劣化させていくことで自発的なスキル移転を促すっていう・・・書いてて妄想レベルになってきたのでこの辺で。

>>>>>[雑記]SIerにキンタマつかまれてるユーザー企業はSIerと心中するしかないね(2007年9月22日 ザキンコの日記

 どっちにしろモラルのないSIerに未来はないけど、社員を使い捨てにして自分達の退職金だけはせしめようってお偉方が居るSIerには気をつけろっていう話。

 [コメント]
 逃げきり世代に逃げきられないためにはどうすれば良いんでしょうね?
 なんだか 「丸山眞男」をひっぱたきたい をふと思い起こしてしまいました。

>>>>>[システム開発]SI屋と顧客の未来(2007年9月23日 masayangの日記(ピスト通勤他

 利益追求を求められる会社組織としてみれば、キンタマつかんだSI屋ってのは、実は「モラルのある」行動をとってきた。そのワケは・・・って話。それで、予想されるシナリオを披露。

 [コメント]
 私もシナリオ1→シナリオ2が濃厚な気がします。でも既存の制約に縛られない会社が絶対勃興してくるはず。それがつまり外資なのかも知れないけど。日本人ってもしかしてDNAレベルでパラダイス鎖国と出遅れスタートが大好き民族?

>>>>>>[システム開発][Agile開発][どうでも良いこと]どーしたらいいんだろうね(2007年9月25日 masayangの日記(ピスト通勤他

 「[SIer][システム開発]技術的老化というSIerの持病」への返信。

 [コメント]
 ウォーターフォールモデル自体が既に破綻してますよね近年は。でも決裁するオヤジがそれしか分かんないから、当面は無理矢理ウォーターフォールをあてはめて破綻するか、周囲の理解やサポートなしでアジャイルを適用しようとして習熟不足で破綻するか。たしかに詰んでますな。
 こうしたblogに書きなぐっているだけだと打開できないのは同感ですが、こうして整理しとくことで少しでもオヤジ抵抗力がUPすればそれはそれで。

◆◆◆

 最後に、下記は、手前味噌だが自分自身の、過去の戯言。
 上記の猛者達が書いた内容と比べると、我ながら、局所論的というか独りよがり感は否めないけど、根底の問題意識は同じだと思っている。

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関連記事2:重層下請け構造のなかから見た、周囲の変化と不変化
関連記事3:いっそ壊滅してみる?