東京ブックフェア2007:出版とIT、対峙から融合へ

投稿者: | 2007年7月8日

東京ブックフェア2007 東京ブックフェア2007に行ってきた。

第14回東京国際ブックフェアは、世界30カ国より770社が一堂に出展する日本最大のブックフェアです。毎年、全国各地の書店、図書館・学校関係者、さらには海外出版社や一般読者が多数来場。会場では、書籍の実物を見ながらその場で書籍の受発注、著作権取引などの商談が活発に行われています。(公式HPより)

 昨年も参加したのだが、昨年と比べ、デジタル出版が格段に増えた。時代の流れを感じる。
 GoogleやAdobeに代表される、出版業界と絡みそうなIT屋も多数出展。

 Googleも、昨年は出版業界からの警戒激しく、それを気にしたのか隅っこのブースでこじんまりとしていたが、今年はわりに普通の位置取りで、堂々とBookサーチをデモ&プレゼンしていた。

 どちらにせよ出版業界とITはこれから融合がますます進んで行くのだろうが、このような展示会の場では、いまのところ両者のプロモーション方針の違いがけっこう出てたりして、面白い。

 出版業界は、児童書なんかは子供が遊べるスペースを作ったり、大手だと著名作家を呼んできてトークショーをしたりと、メディアとしての老獪かつベタベタなプロモーションを展開。

 いっぽう、IT屋はというと、ノベルティグッズも殆んどなく、硬質なブース設計で、相変わらずコンパニオン頼みの、一見きらびやかだが、なんとなく近寄りがたい雰囲気だ。

 特に、電子コミックに代表される電子出版なんかは、せっかく家族連れにアピールできる機会だと思うのだが・・・ブース展示位置は子供の視界のはるか上。

まあもともとは業界内での商談の場なので、いいのかも知れないけど、であれば、いい加減コンパニオン頼みは見直したほうが良いのではないか?

 派遣のオネエチャンに「この画期的なツールのメリット」を説明されても、嘘臭さだけがよぎってしまう。だったら、口ベタでも開発スタッフが説明してくれて多少込み入った質問にも対応してくれたほうが、こうした展示会に出向く意味もあるし、きれいなオネエチャンを堪能したいなら、他にいくらでも機会はあるだろうに。


 もうひとつ、興味深かったのは、出版業界の専門紙「新文化」に掲載されていた、東邦出版の「新刊をYahoo!JAPANに全文無料掲載の試み」の記事。

 本は原稿が完成した後、印刷にまわして製本し取次という流通経路をつたって書店に並ぶまで、およそ15日間かかるそうだ。
 その間、コンテンツは誰にも読まれないまま、眠っている。

 東邦出版の社長はこの15日間に、インターネットに掲載することによって、消費者へのアピールはもとより、取次や書店が内容を吟味して仕入れの量を決定できるのでメリットがある、と考えた。

 しかしメリットはあるにせよ、全文を無料掲載というのは、相当のリスクも感じただろうに、なぜ大手ではない東邦出版がこのようなチャレンジをしたのか。

 社長曰く、このままでは出版業界は行き詰まってしまうことは目に見えている状況なのに、大手はなかなか腰をあげない。自分はオーナー社長で、株主を気にする必要もなく、金銭的には苦しいが動けないことはない。このままでは中小出版社の死屍累々が目に見えているので、自分が動こうと決心したそうだ。

 すばらしい。昨年のブックフェアでかいま見た出版業界のITに対する反応は、まさに黒船襲来に対して「尊皇攘夷派」と「開国派」に二分され、前者が圧倒的多数だったように思う。

 今年は前向きさを感じる。こうした試みが成功することで、出版業界のイノベーションが進むのであれば、それは世の中にとって、良いことに違いない。

 ぜひ起爆剤としてTVでも取り上げていただきたい試みだと思った。

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